表参道周易塾

Column 音占い

易経には地水師という戦いを描いた卦というものがあります。卦というのは、タロットでいえばカードの一枚とでもいえばいいのでしょうか。

 

この卦は、軍隊が出陣する際には、軍律がしっかり守られていなければならないという場面から始まり、戦いが終わった後は、小人には褒美だけ与えて権力や地位を与えてはいけないという論功行賞のことまでが説かれているのですが、面白いことに易経はただ「律」とだけ記されているので、「軍律」のほかに「音律」ととる解釈も、一般的ではありませんが存在しています。存在しているということは、実際に行われていたものなのでしょう。

 

この「音律」解釈は、軍師は必ず出陣の際は、その軍団がどんな音を発しているかその音を確認し、その音によって戦いの行く末を占ったという「音占い」のことです。軍師は笛のような楽器を携えていて、目の前の軍団の甲冑がこすれあう音とか、馬のいななきとか兵士の歩みなどが混然とする中で、一つに集約される音を聴き分けて、笛と同調する音色を探し、軍団の士気はもちろんのこと、勝敗の行く末もその音の種類で占ったものと推察します。

 

軍律が上からの命令だとすると、音律はその軍団自らが起こす音です。古代中国の軍隊組織は、軍律と音占いというフィードバック機能をちゃんと備えていたことになります。

 

古代中国の軍師がよみがえって今のコロナ禍を見たらなんと思うでしょう。

現在、三蜜・ソーシャルディスタンス等々、「国民の生活する音量をともかく下げよ」という軍律が発せられています。このコロナを敵とする我々の戦いぶりを見たならば、軍律自らが音律を消すことを発しているのですから、古代中国軍の保持していたフィードバック機能が完全に機能不全に陥ってしまったと頭を抱え込むことでしょう。

 

そんな時、古代の軍師ならなにを大将に進言しようとするのでしょう。

対コロナの戦いに音量を下げることが不可欠ならば、軍律は極力、威嚇や不寛容であってはならないように。音量を低下して必死に耐えている国民のつぶやく声、うめく声、そんな声を消音として処理してはならないように。

 

大将自らも自分を律して、国民の信用を保つように。

とりあえず、決定的な作戦が立たないうちは、そんなことを静かな口調で、きっぱりと語るのではないかと、想像してみたりするのです。

 

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